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アリアンス・フランセーズ創設140周年記念
世界大会に参加して

札幌日仏協会/アリアンス・フランセーズ
理事長 加藤利器

フランスの言語と文化を世界に広める窓口として、仏政府が大きな支援と役割を果たしてきたアリアンス・フランセーズ(AF)。その創設140年を記念する世界大会が7月11日から1週間、パリで開催され、札幌アリアンス・フランセーズを代表して大会に参加してきました。大会には135カ国から約700人が集結し、アリアンスの組織力の大きさをあらためて思い知らされました。期間中、マクロン大統領主催の歓迎レセプションが大統領府(エリゼ宮)で開催されたのも、アリアンスを重視するフランス政府の表れです。わたしは、この場で大統領と握手を交わす光栄に浴し、札幌から参加した旨を伝えると「Bienvenu」の言葉を頂きました。「Quelle épopée! Quel avenir!」(何という叙事詩なんだ! どんな未来が待っているのか!)をテーマに開かれた世界大会の1週間を写真を交えて報告します。
アリアンス・フランセーズの創設140周年を紹介するルモンド紙の記事(2023年7月6日付)

 

アリアンス・フランセーズの本部はセーヌ左岸、パリ6区のラスパイユ大通り101番地にあります。大会前日の7月10日に本部を下見すると、建物は140周年を記念するポスターで覆われるなど、歓迎ムード一色に包まれていました。

 

ラスパイユ大通り101番地にあるアリアンス本部

世界大会はこのアリアンス本部と徒歩20分ほどのユネスコ(国連教育科学文化機関)本部を会場に開かれました。
週前半の11~13日はプレ・コングレ(事前会議)。連日、数々の行事が本部1階の劇場(テアトル)や市内各地で執り行われました。アリアンスの140年の歩みを振り返る1時間半に及ぶドキュメンタリービデオの上映会やフランス語の綴りの誤りや時制の変化などを題材にした楽しいスペクタクル、さらにパリの文化施設をガイド付きで見学する訪問会などに招かれるなど、盛りだくさんの内容でした。
わたしはすべての事前行事に参加し、久しぶりにディクテに挑戦したり、パンテオンに眠るビクトル・ユゴーなど偉人の墓参、フーコーの振り子時計などを見学したりして参加者と交流を深めました。
会場には必ず、国内各地のアリアンスから駆け付けた職員が手取り足取り面倒を見てくれるなど、ここにも歓迎ぶりが見て取れました。(わたしの担当はカイエンヌ=南米にあるフランス領ギアナの首都=のマルク・パヴェさん)

 

わたしを担当をしてくれたカイエンヌの会長マルク・パヴェさん(中央)

そして、いよいよ記念式典開幕日の14日です。
この日は午前9時からアリアンス本部の中庭で、参加者のうち代表者を招いた朝食会が開かれました。クロワッサンとコーヒー、オレンジジュースという簡素な“プティ・デジュネ“。参加した約200人は国境を超え、あちこちで話の輪を広げ、開幕前から熱気むんむんです。

 

アリアンス・フランセーズの中庭で交流する参加者

そして、同日午後2時からユネスコの大会議場で開幕です。

 

ユネスコの会場入口で出迎えてくれたマルク・セルダン事務総長(左)

入口では、アリアンス財団のマルク・セルダン事務総長が一人一人を握手で出迎え会場入り。アリアンス財団のイヴ・ビゴ会長の開会宣言に続き、政府のフランス語圏担当相や文化省の事務次官、アリアンス財団の副理事長らが次々と登壇して祝辞を述べ、140周年の機運を盛り上げました。

 

ユネスコの大会議場で開かれたアリアンス世界大会の記念式典開会式

その日の後半はアカデミーフランセーズの会員でフランスを代表する文学者エリック・オルセナさんが「あすのフランス語(La langue française demain)」と題して講演し、世界の多様な文化を育むうえで、フランス語の果たす役割が今後、ますます重要になると強調し、会場から大きな拍手を受けていました。
開幕の夜は再び、アリアンス本部に戻って晩餐会。パリの料理学校コルドン・ブルーの学生たちが総出で用意したフルコースの料理とおいしいワインが振る舞われ、時計の針が翌日になるまで、至福のひとときを過ごしました。

 

晩餐会はコルドン・ブルーの料理学校の学生たちが担当しました

大会2日目の15日はアリアンス本部で討論分科会が開かれました。3つの分科会のうち、わたしは「アリアンス・フランセーズのさらなる公平性と多様性」と題した会合に参加しました。各アリアンスが異文化間の対話に積極的な役割を担い、世界各国で展開するアリアンスの公平性と多様性を尊重しつつ、フランス語を通じて文化の伝承の使命を全うする責務を確認しました。(議長はチュニスAF会長モハメッド・エサウイ氏が務めました)。
夕刻はマクロン大統領のレセプションに招かれました。

 

エリゼ宮に招待されたわたし(加藤)

この日はフランスで勃発した暴動などの収集を図るため、内閣改造が行われ、4人の大臣が交代するという極めて大事な一日です。大統領も多忙を極めたはずですが、レセプション日程は3回変更となったものの、午後7時30分からエリゼ宮の中庭で執り行われました。それは、アリアンスの記念式典をフランス政府としていかに重視しているかの表れでもあり、あらためて、アリアンス・フランセーズの果たす役割の重要性を認識しました。

 

アリアンス・フランセーズ140年のレセプションで祝辞を述べるマクロン大統領

祝辞に続いて、大統領は参加者と15 分ほど歓談しましたが、わたしも折角の機会なのでご挨拶させてもらいました。

 

エリゼ宮の中庭でアリアンス世界大会出席者と歓談するマクロン大統領

大統領 「Vous êtes quelle alliance?」
加藤  「Sapporo,Japon」
大統領 「Bienvenu」
わずかこれだけの会話でしたが、大統領と握手を交わし、札幌の名前を伝えられたのは、まとないチャンスでした。

そして最終日の16日。閉会式もユネスコ本部で行われましたが、わたしはこの日、朝から体調を崩し、微熱が続いたため、欠席させて頂きました。前日、マクロン大統領と握手を交わしたのが原因だった? わけではありませんが、おそらく疲れが出たのでしょう。
予定では、「エコ責任トロフィーの授与」「アリアンス・パートナーシップの締結」「会議の要約と結論」を経て、無事終了したと聞いております。

 

イヴ・ビゴ―会長(中央)とわたし。左はケニヤのアリアンス会長

今回の記念式典に参加したことで、日本の最北に位置する札幌のアリアンスを何とか存続させなければならないとの決意を強くしました。そのためには、会員の増強や活動の活性化などみんなが手を取り合って、支えていく必要があります。アリアンスとはフランス大統領が「守り抜かなければならない」と力説するほどに大事な組織です。日本の北の拠点・札幌アリアンス・フランセーズの灯をともし続けていかなければ・・・。こんな思いを強くした、忘れ得ぬ1週間でした。