函館日仏協会の11月例会で講演
理事長 加藤利器

函館日仏協会(若山直会長)の11月例会が11月24日(金)夜、五島軒本店で開かれ、昨年10月に続いて、函館の皆様の前で講演する機会を頂きました。
今夏、私はパリで開催されたアリアンス・フランセーズ(AF)世界大会に札幌を代表して参加し、世界131カ国から集まった仲間と交流してきました。マクロン大統領ともエリゼ宮(大統領府)で催されたレセプションでお会いしたことを若山会長にお話ししたところ、「ぜひ函館の会員にフランス滞在記と題して講演してほしい」と依頼があり、今回の訪問となりました。

函館日仏協会の11月例会での講演風景

講演は『函館とフランスを結ぶ深い絆』(Les liens profonds entre Hakodate et la France)と題し、AF世界大会の内容を中心に、函館日仏協会とフランスとの交流の歴史にテーマを広げて、滞在中に撮影した100枚の写真を使ってお話ししました。
アリアンス世界大会については、すでに当HPでもご報告しておりますが、世界に拠点を置くアリアンスが、単にフランス語を学ぶ場を提供するだけではなく、公平性と多様性を尊重しつつ、フランス独自の文化を世界に発信し続ける役割を果たさなければならないー。こうした世界大会の理念と精神を強調しました。
続いて、私はアリアンス世界大会後、約30日間にわたる自らの国内旅行について語りました。
私が訪れたのは、ロワール川河口の港町ナントと南仏アヴィニョン近郊のオランジュというまちです。旧友と再会するための旅でしたが、実はいずれも函館日仏協会の取り持つ縁で知り合った方たちでした。
偶然にも2人の名前はクロードさん、年齢は76歳です。


 
ナントでお会いしたのはクロード・ブリアンテさん。ナント仏日協会の元会長で、函館との姉妹都市締結に向けて奔走した方です。函館日仏協会が発足した1983年直後の話ですので、もう40年近く前になります。両都市の姉妹都市は実現しませんでしたが、双方からの相互訪問がしばらく続き、ブリアンテさんも2度、函館を訪れています。美しい夜景とともに、函館で歓待を受けた数多くの記憶がいまなお鮮明に残っていました。
(私は北海道新聞の函館支社報道部に勤務した時にこの報道に携わりました)


ナントと函館の姉妹都市
の動きを報じる
北海道新聞の記事

オランジュで再会したのはクロード・マスクレさん。函館日仏協会はスイス国境に近いアン県仏日協会と1997年、姉妹協会を締結しました。その交流行事を取り仕切ったのがマスクレさんでした。お父さん、奥様を相次いで亡くし、再婚した奥様も病で亡くなるという不幸が続いたため、生まれ故郷を離れて現在、オランジュで一人暮らしをしています。函館の人たちが村を訪れ、満天の星空の下で一緒に交流した日のことを、きのうのことのように覚えておりました。(私は北海道新聞のパリ特派員時代にこの報道に携わりました)

函館とフランス・アン県の日仏協会の姉妹協会締結を報じる北海道新聞の記事

フランスの地方に住む人たちと函館の間に結ばれた交流の絆が、色褪せるどころか、時を経て、逆にくっきりと蘇る姿をつぶさに見て、私は感動しました。世界で悲惨な戦争が起きている時代に、真の平和とはこうした小さな友情の積み重ねによってこそ得られるのではないか。こんな思いを強くしたのです。
その意味で、函館日仏協会が果たした草の根の交流には、深い尊敬と敬意の気持ちを抱いております。私どもの協会も、フランスに向けて情報を発信し、フランスの市井の人たちと交流を深める活動ができないか。函館の皆さんと集合写真に納まりながら、こんな思いに駆られた、印象深い「函館旅」でした。

函館日仏協会の皆さんと集合写真。前列左から3人目が若山直会長

*講演の写真は函館日仏協会の佐々木慶一理事が撮影してくれました。佐々木さんは武蔵野美術大学在学中にパリ国立高等美術学校に留学した経験があり、金沢美術工芸大学大学院(修士)を経て、函館に帰郷して創作活動を続けています。